一文物語弐天零[2.005]皐月

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一文物語 弐天零[2.0]皐月

一文物語2.0 2020年5月

1

悪態をついて、次々と周囲の人々を傷つけて孤独になった彼は、彼の内に隠れていた本心が、彼自身を殺しにかかっている。

2

地中から出ている紐を引き続けて、ふと顔をあげると、世界が絞り歪んでいて、さらに紐を引っ張ると、世界がさらに絞られて狭くなっていく。

3

嫌になったら押してください、という説明だけのストップボタンだけが送られてきて、何をストップさせるのか、考えるのが嫌になっても、なかなかそのボタンを押せずにいる。

4

彼の秘密を探ろうと、身辺を洗ってみたり、部屋にお邪魔したりしたが、疑わしいモノはなく、彼の秘密の隠し場所は、夢の中で誰も触れることができない。

5

彼女は常に、輪になったロープを投げられるようにしていて、白馬の王子が現れたら捕まえてると言って、ついにロープを投げて捕らえるも引きずられ、最後は身も心も削られてロープを手放した。

6

片方の恋と片方の恋が正面衝突。

7

見えない紐が心に結びつけられていて、風船のようにどこまでもついてくる月は、みんなが暗闇に差しかかった時、上を向かせるように光っている。

8

人生に迷いを感じた彼女は会社を飛び出して、いつの間にか息を切らして森で迷っていると、口をパクパクさせた大きな金魚が浮遊していて、安心して吸える空気を探している迷走した人々のその魂に彼女も取り込まれた。

9

目隠しをして対峙する屈強な体の男二人は、腕を構え、互いに足元を確認するかのように一歩一歩進んで肩がぶつかると、腕を振りかぶって拳を繰り出すも空振りし、唇に何か柔らかいものを押しつけられる感触を二人は覚えた。

10

お金を入れれば、物が生み出される自販機の中身は売り切れになり、それでも存在需要を求められ、自販機は仕方なく自分の部品を出して徐々に小さくなり、最後は姿が消えた。

11

迷路を抜け出そうと、迷路のパズルを完成させようとしていた青年は、ついにパズルを完成させて迷路を抜け出すと、真っ白な世界に立っていた。

12

鬼が骸骨に血肉になる粘度を貼りつけて人を作るこの異常な世界で、人々は普通に生きることを一生懸命模索している。

13

暴風雨に直撃した船を巨大タコが初めて好機が来たと襲い、グルグルとタコ足を船に絡めたつもりが絡まって、船もろとも沈み、二度と姿を現さず、その海域では幽霊タコ船が出ると噂が広がっている。

14

おでんをじっくり32、33くらい煮込み数えると、油田になっている。

15

突如降ってきた雨に、彼は持っていた傘をさすと、急に見知らぬ女性がひょっこり中に入ってきて、一人くらいならいいか、と思っていると、次々と傘を奪い合のか、彼を奪い合う戦いのように、女性たちが入り乱れ、血の雨も降り始める。

16

彼女の長い髪の毛は、毎朝起きると、迷路のように複雑に絡み合って広がっていて、それを解くだけで一日が終わり、もう寝る時間になってしまっている。

17

勢いがなくなってくすぶり始めた炉に、彼の頭を突っ込むと、いっきに火が吹き返し、真っ黒になって出てきた彼の頭の中は空っぽで、彼の安く燃えやすい妄想が燃料に使われている。

18

部屋中がケーブルだらけで、彼女自身につながったケーブルを外出する時も引きずり伸ばし、何かに繋がれていないと誰もいないどこかに流されそうで不安で、いく先々でまだ使用されていない穴に足跡を残すようにケーブルをとりあえずつなでいく。

19

モグラから作られたその生きた靴は放っておくと、勝手に地面に潜り込んでしまうので、普段は紐につないで保管しておくが、いざ、履いて歩こうとすると、どんどん体が地中に沈んでいく。

20

魔法でなんでも浮かせてしまうその魔女は、好きになってしまった男の妻に魔法をかけて気持ちを浮かせ、怒り悲しんでいる男の背後から、魔女はやさしく声をかけるのだった。

21

真に自分を受けてとめてくれる太陽パネルに興味を持った太陽が、そこだけに細い光を送って、もう頑張らなくていいと寝静まり、つられるように宇宙も寝静まる。

22

男が予約した森深い山賊レストランに到着すると、すでに大人数分の木の食器が並べられているが誰もおらず、ガサッと現れた血だらけの山賊料理長が、団体客がキャンセルになって、と出してきた料理は、細長い骨つきの肉料理がなぜか多い。

23

再現性が高いという噂のプラモデルが届き、本体を作るのは楽しかったが、本体を立てる足元の芝生は一本一本あり、設計図は万単位の数字と位置の指示で真っ黒になっていて、途方に暮れている。

24

フラミンゴの群れの中の黄色い肌の彼女は、同じように片足で立ち続けても、その色や形になることはできず、群れを蹴散らすように自分の道に両足で駆け出すと、彼女にしかできない立ち振る舞い姿のポスターが、世界中に貼られていった。

25

かぶっていると望みを叶えてくるという帽子の効果はなく、ついに崖の上に立つと、その帽子が飛ばされ、ふっと我に返った彼女は、 記憶を抜きとっていった帽子型のUFOから目を離し、笑いながらその場から去っていった。

26

時々、月が見えなくなることがあり、月は宇宙の目の一つとわかり、宇宙が瞬きをしていることもわかり、地球を監視していることも判明した。

27

死の間際、魂がデジタル化されるときに聞こえてくるのは、一切リズムの狂わないデジタル木魚の音。

28

世界を転々と、誰もが握りたいと探し求めていた何でも操る指揮棒をたまたま握った少女は、空に向かって棒を振ると、壮大にかつ幻想的に空を踊り泳ぐクジラが現れた。

29

心の洗剤で、汚れて重かった心を洗い流した彼女はスッキリしたが、まるでぽっかり穴が空いたように寂しくなってまた、ただカラフルに塗りたくられた模造心をつめ込んでいる。

30

せっかく形になったのに、細く切られて熱湯にぶち込まれ、そんな簡単に食われてはたまらない蕎麦は、ざるに絡まって離れようとしない。

31

そのプールでは、夜、ゴーグルが一人でに泳ぐという奇妙な噂があるが、目を充血させたくない透明人間が泳いでいるとは、まだ誰も気づいていない。

一文物語 弐天零[2.0]皐月

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