一文物語弐天零[2.010]ほっこりんすバスタイム
一文物語2.0 2020年10月
2020年10月31日更新
一文物語 ほっこりんすバスタイム
本作は、バスタイムのように、ふと想像してほっこりできるテーマの一文物語集。
1
広がってしまう癖のある髪、荒れた性格、落ち着かない気持ち、さらには荒れた道路、荒れ狂う天気、そのトリートメント液を塗ったり、まくだけで、やさしく真っ直ぐ穏やかになり、その星はまんマルで、素直なモノばかりで溢れていた。
2
彼女は、自宅で真っ白な化け猫を飼っていて、自分が飼われている自覚がありつつも、もふっとしたそのお腹の上に飛び込んで寝るのが、仕事を終えてからの楽しみなのである。
3
体のゆるんだところや伸びたところに妖精が宿るらしく、よだれ、お漏らし、水の妖精が宿っている。
4
入社してまもなくの若い彼女は、仕事でミスをして、会社にくる資格はない、と大目玉をくらった明くる日、さらにミスをして、少し前まで通っていた学校に登校しちゃった。
5
石と思って握ったそれは、ふにゅっと握った指が、その中に沈む柔らかい石。
6
餅のついた杵が、空から落ちてきて、ウサ耳をつけたかぐや姫が慌てながら満面の苦笑いをして、手がすべっちゃった、と月からやってきた。
7
少し遠くでやっているケーキの食べ放題会場に到着すると、食べても食べても食べきれないケーキ惑星に、みんな幸せそうにかじりついていた。
8
吹いたシャボン玉を追いかけて行き、割れずにより遠くまでいけた方が勝ちなのだが、彼女の想いも含んでふくらんだシャボン玉は、気になる彼のところに、どうしても流れ着いてしまう。
9
きれいに食べてもらえない怒りから、とうもろこしは、口に当てられる瞬間、全つぶ、ポポポポポーン、と螺旋を描くように、皿の上に飛び落ちることにした。
10
彼女の人生のパズルが崩れ、いつも下を向いてただただそのピースを拾い続け、上手くはめられなくても、一緒にピースをはめ続けてくれている夫が、いつも隣にいる。
11
雨上がりに、少女は、棒を空に向けて、くるくる振って、虹の綿あめを作っていた。
12
氷原を腹這いで滑っているペンギンは、思わぬ下り坂に突入し、止められないまま、最後は海に飛び込むのだろうと思っていた時、突如現れた穴に落ち、加速した勢いで、大都会のマンホールから飛び出し、チヤホヤされている。
13
噂を聞いて、水族館から逃げ出したペンギンは、街中でチヤホヤされることも無視して、やっと見つけた氷の世界につながっているマンホールに飛び込んで、出口の穴から勢いよく飛び出ると、どこまでも広がる氷原を腹這いで滑り楽しんだ。
14
その老婆の後ろ髪をまとめて留めている大きめのピンク色クリップが、入れ歯に見えて仕方ない。
15
悲しみに暮れていた彼女は、男から、胸に入れておくといい、と心のホッカイロを手渡され、振り返った時にはいなかった。
16
喜び、怒り、哀しみ、楽しさを人同士でぶつけ合うことが終わり、すべて花が開くことに変わって、様々な色、形、香りの花が咲きほこる花の地球となった。
17
ちょっとつまずいてしまった彼女の背後から、隠していたふわっふわのシッポが出てしまい、大慌てでしまって、何事もなかったように歩き出す。
18
外したクリップを落としてしまい、そこに通りがかった彼女が拾ってくれたそのクリップに、彼女の愛が挟み込まれていた。
19
彼女は、仕事に疲れると、空に糸を垂らし、釣った星を明かりのないお風呂に沈めた星風呂につかって、疲れと濁った心を星浄化している。
20
彼は、満ち満ちたその怒りの力で、巨大な岩を山頂まで抱えのぼり、鬱憤を晴らすように空中でその岩を砕くと、一発の花火のように散って、自分の心と人々の視線を上向きにした。
21
瓶ラムネのビー玉を1回も詰まらせることなく飲みきった夏。
22
じっくり煮込まれたチャーシューが鍋から引き上げられる夢を見たのは、食事までの間、風に揺られたハンモックで寝ていた時だった。
23
そのピアノの音色からは、クジラの背に乗って、海面から降りそそぐ光を浴びたクラゲが蝶のようにたゆたう下をゆっくり優雅に海遊する演奏者の思い浮かべた光景も聞きとれる。
24
夜、シャボン玉を吹き、たまにウサギが反射する大小さまざまな満月を、少しの間、眺めている。
25
畳一枚で、雨風をしのげず漂流してしまっている彼だったが、茶を沸かし、ただ流れいく雲を眺めてくつろぎ、行く先は風まかせ。
26
その夕焼けは、向こうの空に金魚がたくさん集まって、色を浮かび上がらせている。
27
町の隅の目立たないところに住んでいるその老婆は、しわくちゃの手で、傷ついてやぶれた心をやさしい針と糸でかがって、癒してくれる。
28
土星の輪の上側はメリーゴーランドで、下側は宇宙ブランコで賑わう超大型惑星遊園地。
29
美しいお姉さんが少し元気なさそうに、風船を子供たちに配っていて、羽衣をなくして、集めた風船では飛ぶことができなかったが、風船を受け取る子供たちの喜ぶ笑顔に癒されている。
30
正装に着替えさせられ、鍵のついたその服の暗号を堅苦しい中、必死に解き、服を惜しみなく脱ぐ。
31
彼女は、まだ誰にも覗かせたことのないその万華鏡をこっそり彼に向けて、光の中で通じ合って咲く愛の華を見て、うっとりしている。
終わり