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一文物語弐天零[2.007]/一連文物語サボテンデイズ

一文物語弐天零 One Sentence Story 2.007 一連文物語 サボテンデイズ
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一文物語2.0 2020年7月

一連文物語 サボテンデイズ

本作は、一文で完結しつつ、続きもののように読める一文物語

彼女が仕事から帰ってくると、観葉植物たちが部屋から逃亡を謀ろうとしたのか、血を流すかのごとく土をこぼして鉢ごとバタバタ倒れていたが、葉や茎に無数の針が刺さっていて、唯一いなくなっていたサボテンによる刺殺事件の幕が上がる。

町のあちこちで、植物にあるような細い針で刺される事件が多発し、みんな困っていたが、一部の人たちは肩こりが治って喜んでいた。

行方を捜している張り紙を貼ったら、植物が歩いていなくなるわけがない、などと中傷と辛辣な言葉が心にチクチクと刺さって、彼女の胸は痛んでいる。

約束は破っていないが、中には破った者もいるようだったが、殺傷性の言葉を生んだ者たちは針千本を飲まされたり、指先を針で刺されたり、それでも自分は悪くないと自覚がない。

紫陽花の花びらをまとって身を隠しているサボテン。

蝶が雨宿りするために止まった紫陽花の花びらで身を隠していたサボテンは、ゆっくりと前を通過するカタツムリに、何してるの、と言わんばかりに目玉を近づけられて動けずにいる目の前を、サボテンを探す女が通過して行った。

花屋では、その町で動き回っているという植物の噂話で持ちきりで、自分もひと目見たく、早く買われて花屋を出ようと、他にない可憐な花を咲かせてみせるも、頑張りすぎて早く枯れてしまうものが続出している。

噛み砕かれてはいけないと、針を引っ込めて大人しくしているサボテンは、犬に咥えられて、裏路地から連れ去られている。

夜中中も大切なものを探し回って見つからず、雨と涙が混じって見上げる朝の虹。

悲しみの夜の後の爽やかな朝、彼女は、仕事への道を歩くのはもったいなと、いつもと違う方向の電車に乗って、水族館の膨れたトゲトゲのフグの口の中に、一瞬、サボテンが見えて、よく見たいとガラスに頭をぶつけ、正気に戻る。

犬小屋の奥に置かれて、常に見張られているサボテンは、天井を突き破って逃げ出そうと、木になることにエネルギーを費やし始めた。

捕まって、相手は飽き性でほんのしばらくして興味を失ったので、そこからいとも簡単に逃げ出すことができたが、緊張感がなくなって寂しさすら感じて、さらなる刺激を求めて走り出す。

不審な針で刺されて、肩こりが治ったという人たちも時間が経つにつれて、緑色の肌になりつつ卍の形をとりながら全身から針を出して体が固まっていく。

動き回るサボテンが世間を賑わせているのに乗じて、サボテンゼリーなるものを販売した店でみんな、針が口に刺さらないかと、恐る恐る食べて、笑顔で頬をはらしている。

素手でサボテンをつかみ、平気で捻って割ったり、バリバリと、サボテンを食べる夢を見た昨夜は、暑く寝苦しく、晩に、冷やしたきゅうりをむさぼり食べていた。

就ければなんでもいいやと、とりあえずやってきた会社の面接で、どんな苦難も乗り越えられるか、なんでもできるそれへの愛が問われ、どんな時も頑なな執着心があるか試され、力強く離さないかどうか、サボテンに手を近づけて固まっている。

約束を破ってしまったばっかりに、針千本を飲ませられることになった男の口にサボテンが突っ込まれ、喉奥に無数の針が突き刺さる。

約束を守れない人々は、鋼鉄のマスクをして口をつぐみ、針千本のまされないように、静かに生きている。

わたあめのなかにサボテン。

逃げ出したサボテンを探している彼女は、スーパーで、きゅうり、ゴーヤ、ピーマンの色と形に目が反応して、パッと目がいってしまい、時に道端でヘチマにも目がいき、目頭をおさえた。

不満を抱えている人々は、全身に針が出て、怒りとともにその針を人に向かって飛ばして刺したり、拳を殴りつけるかわりにこすりつて、傷つける。

新しい砂を入れた新しい鉢を目撃証言の多かった場所に置き、おびき寄せる作戦をとって様子を見ていたが、新しい住処として蟻が、ゾロゾロと入居し、作戦失敗。

老婆は、縫い途中の針をサボテンに刺して、いったん席をはずして戻ってきたが、針をどこしたか緑色の針刺しも見当たらない。

道端で、彼女は、部屋から逃げたサボテンとたまたま遭遇し追い詰めたが、素手でどう捕まえようか考えているうちに、取り逃してしまった。

髪を切ってもらっていた彼女は、手違いでバッサリと切られて、ショックと怒りがこみ上げてきた瞬間、いてもたってもいられず、ハサミと手袋を借り、針が飛んできてもいいように、そのままの格好で街へ飛び出した。

次こそは切り刻んでやると、意気込みすぎて目が血走っている彼女は、街中を駆け回っていく中、目の入ったこじれた縁談の線も、炎上する赤い糸も、手に持ったそのハサミで切断していくと、辺りは静まり返っていた。

さわさわ、はらはら、ススッススッ、ザザザ、ズズズ、スルスル、ズルズルズル、ガチガチ、ゴゴゴゴゴ、植物の足音が聞こえる。

少女が細い指先で、突っついたり、やさしくなでたり、くすぐったりしているところに、離れて、と、マントを羽織り、ハサミを持って息を切らす女が現れ、サボテンが逃げ出す。

彼女が路地の行き止まりに追いつめると、夕立ちが降り始め、最後の決闘の始まりを告げるような稲光に、サボテンの針の一本だけが強く反射する。

雷雨の中、捕まえたサボテンに一本だけ刺さっていた鉄の針を抜くと同時に、空には虹がかかり、風にまかれた七色の粒子を浴びて、サボテンは動かなくなった。

世間を騒がせたサボテンは、新しい砂を入れられた鉢の窓辺から、見て回ってきた面白おかしな世界を、針なるアンテナから光の網に流し込んで、人々は作者不詳のその話で盛り上がっていた。

終わり

一文物語弐天零 One Sentence Story 2.007 一連文物語 サボテンデイズ

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