7.ツバメの忠告

Web連載小説「理想水郷ウトピアクアの蝶」第1章セリカ・ガルテン 7.ツバメの忠告

寮の部屋に案内されたほとりは、ツバメに予言の子として認めないことや、インボルク計画に反対するものたちに関わらないように忠告される。

そして、部屋に突然の訪問者が……。

 廊下に出ると、廊下が長く伸びていた。廊下を挟んだ反対側にも部屋の扉が並んでいる。しかし、部屋から声や人の気配がほとんど感じられない。

「寮は隣の建物にあります」

 せかせか歩くツバメに追いつくと、口早に冷たく言われた。

 普通の学校とは思えないほど、二人がすれ違って行き来するくらいの幅しかない階段を降りていく。

 それは、空を飛ぶ前提でここが作られているからだった。使う機会がほとんどないことがわかった。

 二階に降りて、さらに廊下を進むと、渡り廊下があった。屋根はついているが、窓はなく風が抜けていく。

 学舎と寮の前は、庭園になっていて、整えられた草木や花々を女子生徒たちが丁寧に手入れをしている。

 庭園広がる丘から見下げた先には、太陽に反射する海だけがどこまでも広がっている。

 ほとりは、改めて周囲に海にしかないことを自覚した。

 寮の建物も木造だった。落ち着いた雰囲気とは裏腹に、女子生徒たちの明るい声が飛び交っている。

 制服を着ていないほとりは、すぐに視線を浴びせられた。

「ここです」

 渡り廊下を渡ってすぐ、庭園とは反対側の山側に面したドアをツバメが開けた。

 ベッド二つあり、その奥に机が二つ。壁に埋めこれまた扉のついた棚。並んだ机の横にそれぞれ棚が設けられていた。

 机のところに窓もある。羽を広げて外には出るには狭かった。

「必要なものは一応そろっていますが、何かあれば言ってください。

 夕食は一階の食堂になりますが、今日は時間になったら迎えに来ますので、部屋で待っていてください。

 それと、制服があるので着替えておいてください」

 ツバメが指差した壁に、真新しい制服がかけられていた。

「はい……ありがとうございます」

認めない

 ツバメはドアの前でいったん止まって、振り返った。

「私は、認めたわけじゃありません」

「えっ?」

 ほとりは、ツバメの角張った眼鏡の奥から細く強い視線を送られた。

「今来たばかりのあなたが、会長の跡を継ぐなんて私は認めない。

 予言の子として会長はあなたを高く買っているかもしれませんが、それなりの覚悟をしておいてください。

 近く、生徒会に入った者全員が、最初に必ず受けなければならい課題が出されるでしょう。

 そこであなたの実力が試されます。そのつもりで」

 一方的に言われたほとりは、声を出すことができなかった。

 ツバメが背を向け直し、ドアノブに手をかけると、またほとりに振り返った。

「それと、ルサルカ派には近づかないこと」

「ルサ……ルカ……ハ?」

「ルサルカというインボルク計画に反対する少人数のグループ。簡単にいえば、ナイアの考えに賛同する者たちよ」

 ほとりは、インボルクの浄火の絵の隣にあった水の絵を思い出した。

「これといって悪さをしてくるわけではないが、会長と計画には反対する者たちだ。会長に迷惑をかけたくなければ、関わらないことだ」

 そう言われたものの、ほとりは自分がどちらにつくべきなのか、そもそも自分が何をすべきかもわからず、黙っていた。

「いいな」

「あ、はい……」

 ほとりは、そう答えるしか余裕はなかった。

 呆然と立つほとりをそのままに、ツバメはドアを開けた。部屋の前には、数人が部屋の様子に聞き耳を立てていて、ツバメと目が合うと、すぐにその場から散っていった。

制服

 やじ馬がいなくなり、ドアがしまったことでいっきに静かになった部屋に一人ほとりは、体の力が抜けるようにベッドに腰を降ろした。

 山側のその部屋は、日もはいっていないせいか、布団がひんやり感じた。

 窓からは、木々が生えていることくらいしか見えない。

 ほとりは、孤独や悲しさを通り越し、夢の中に閉じ込められているようで、頭がふわふわしていた。

 聞く言葉一つ一つが、知らない言葉と意味がわからず、混乱していた。

 顔を上げると、ハンガーにかかった制服が目についた。

 普段、学校で来ている制服とは違っていた。白を基調とし、緑色のラインが入った見たことのないセーラー服。

 とても明るく、かわいいと思ったほとりは、ふっと笑ってしまった。複雑に入り交じった感情がついに壊れてしまったようだと感じた。

 襟元から伸びたスカーフの色は、緑色。それを見たほとりは、明日架のスカーフが、もっと明るく光るような緑色だったと思い返した。

 ツバメは水色のスカーフだったことにも気づくと、何か意味があるのだろうと悟った。

 何人か他の生徒たちも見たが、他に何色のものを身につけていたかまでは思い出せなかった。

 好きな色を選べたりするのだろうか、と思いながらほとりは着替えた。

 部屋の入り口の横壁に設置された姿見で、自分の制服姿を確認すると、地味な学校制服よりは断然よく見え、気分も少し上向きになっていた。

 右半身、左横と全体を見ている時、ドアが開いた。

 呼びに来たツバメだろうかと振り向くと、そこにはセリカ・ガルテンの制服を着た友理の顔があった。

 その顔を認識した瞬間、ほとりの心の中で押さえ込んでいた栓がはじけ飛んだ。

「ちょっと、失礼するよ」

 大荷物を抱えてかまわず入ってこようとする友理に、ほとりはかまわず抱きついた。

「友理もこっちに来てたんだ。私、これからどうしていいのかわからなくて……」

 もうその時には、ほとりは目から雨のように涙をこぼして嗚咽していた。自分でも何を言っているかわからないほどだった。

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