一文物語集「小さな翼の種」の手製本制作全工程
1年ぶりの新作となった一文物語集。
制作に取り掛かり始めたのは、2019年12月。2020年1月末までに70本の一文物語を作りました。合わせて、挿絵も書きました。
手製本作りは、2月に入って1週間弱で制作。
今作の本文作りから、手製本制作の工程を順番に写真多めでご紹介します。
本文制作と確認用冊子の作成
Scrivenerというエディターで、一括管理
複数の書類をアプリ内で管理できるScrivenerというソフトを使って、一文物語を書きためて行きます。
連番を振ってはいますが、制作の順番で、作品の並びとは関係ありません。
Tap Forms5 というMac専用アプリで、データベース化します。ここで、作品の順番を入れえたり、原稿用に書き出すことを行います。
Pagesで、レイアウトを作成
今回は、AppleのPagesでレイアウトを作りました。
A4サイズから作っていきます。両面印刷して、A4用紙1枚から16ページの折丁を作っていく流れです。
誤字脱字や挿絵の配置などを確認するために、テストプリントします。
本番用の書籍用紙にもテスト印刷し、インクの濃さや品質の確認を行いました。
手製本なので、基本的には自宅で全部作っていきます。印刷も一般的なインジェットプリンターを使用しています。
確認用に印刷したA4用紙を四等分にカットします。
レイアウトしたページ数分プリントアウトして、同じようにカットして、折丁・16ページの小さな冊子を作ります。
確認用とはいえ、手製本のサイズなので、糸でかがり、実際のサイズでレイアウトを確認していきます。
誤字脱字や挿絵の位置、レイアウト全体を確認していきます。
プリントすることで、パソコン上では気づかなかったことがわかります。
書籍用紙での本文制作
データに修正を加えたら、本番用紙の書籍用紙に部数分プリントアウトします。
私が使用している書籍用紙は、淡クリームキンマリ。書店で売られている本と同じような黄色っぽい用紙です。
ペーバーミツヤマさんが販売している書籍用紙です。楽天で購入することができます↓
A4用紙をA6サイズにカット
大量の本文用紙をカットするので、スライドカッターを使用します。
このスライドカッター・ハンブンコは、位置を測らなくても、左右のゲージで合わせるだけで、半分にカットできてしまう優れもの。
半分にカットした用紙をさらに半分にカットします。
残りも半分にカットします。
1枚のA4用紙を4つにカットしました。
半分にカットした裁断機はこちら↓
折って、16ページの折丁を作る
4つにカットされた本文用紙を半分におります。順番に重ね合わせていくと、16ページの折丁ができます。
部数分折って、重ね合わせていく作業を繰り返します。
本作は、80ページなので、5つの折丁が出来上がりました。
折り目に糸を通す穴あけ
折った本文用紙の背に糸を通す穴をあけていきます。
自作した穴あけ用の道具。コルクのマットに、サイズと穴の位置を合わせたアクリルのガイド板。
アクリルの穴に針を通すだけで、位置を測らなくても穴を開けることができます。
穴をあけ終わった折丁。どの折丁も同じ位置に穴があいています。
ひたすら部数分の折丁の背に穴を開けていきます。道具があることで、そこまで手間をかけずに穴をあけていくことができます。
表紙作り
表紙は、以前作ったことのあるタイプなので、切り込み用のガイドを引いたテンプレートを使用。
写真や文字を配置して、色味を調整しています。
使用する紙は、インクジェットプリントできるOA和紙。
テストプリントを重ねて、色味を目で確認していきます。
プリントしたのものをガイドに合わせてカットしたところ。
印刷のムラのような線がところどころ光って見える部分があります。これは、和紙のなかに羽のような繊維が固まっている部分。
もともと和紙の中にあるもので、角度によって、光って見えたりもし、和紙の味わいがあります。
カットする前に、裏面に、別のガイドを引きます。カットしてしまうと、ガイド線がつけられません。
表紙と裏表紙を切り出しました。これでは表紙としては薄いため、これに厚紙を貼ります。
貼り合わせる厚紙を折る
A6サイズの厚紙です。ボール紙という名前で販売されています。厚さは、35kとそこそこしっかりとした厚みのあるもの。
書籍用紙と同じペーパーミツヤマさんで購入しています。サイズによっては、裁断もしてくれます↓
半分に折ります。
表紙の和紙と厚紙を貼り合わせる
貼り合わせる糊は、これまた手作りの糊です。
フエキ糊と水を混ぜ合わせたものに、ボンドを混ぜたノリボンド。糊の強度も調整できて、貼り合わせた直後なら、すぐに剥がすこともできます。
とても使い勝手のいい手作りの糊です。
作り方は、こちら↓
和紙と厚紙を貼り合わせる際、和紙の裏側に引いたガイドに合わせて貼り合わせます。
この時点で、本の背中側になる部分も、厚紙に貼り合わせておきます。
本の開く側を間違えないように、表紙と裏表紙に厚紙を貼りました。
表紙と裏表紙の背に、糸を通す穴をあける
本文と同じように、厚紙を貼り合わせた表紙にも、糸を通すための穴をあけていきます。
ここでも先ほどの道具を使って、穴をあけていきます。
厚紙を貼っているので、本文用紙に比べると少し力が必要です。
表紙の背に穴があきました。
部数分、全ての表紙と裏表紙に穴をあけました。
糸かがり
表紙と本文、そして裏表紙まで、糸1本だけでかがっていく手法。
道具だけを見ると、裁縫と一緒です。
穴をあけた本文用紙に糸を通しているところ。
1年ぶりに糸かがりをしたので、最初のうちは思うように手が動いてくれませんでした。4冊ほど仕立てる頃には、前と同じ感覚で作業することができていました。
糸かがりした背の部分。
今回は、サンプルを含めて7部制作しました。
表紙と裏表紙の内側を貼り合わせる
まだ開いている厚紙の表紙を閉じます。
手作りのノリボンドを使って、しっかりと貼り合わせていきます。
糸の最初と終わりの結び目は、この厚紙の中に入ります。ここを貼り合わせてしまうと、外見からは、糸がどこから始まっているかわかりません。
ノリしろ部分の和紙で、厚紙の口を丁寧に閉じていきます。エッジをしっかり出すことで、締まりのある見栄えになってくれます。
厚紙を和紙で閉じ終わったら、見返しとなる紙を貼りつけます。
表紙よりひと回り小さいサイズに切り出した紙を貼ります。
裏表紙も同じように、ノリで閉じていきます。
同じく見返しも貼って、表紙と統一しています。
糊を貼り合わせた直後のもの。これで、本になりました。
最後に、プレスして糊を乾燥させて、出来上がり!
まとめ
1年ぶりの新作手製本づくり。
しっかり作れるか不安な点もありましたが、楽しく最後まで作り終えることができました。
手製本はもとより、一文物語という作りは変わりませんが、新しい切り口での制作に挑んだ作品でもあります。
70本の新作が挿絵とともに楽しめるもとなっています。
一文物語集「小さな翼の種」は、2020年3月に開催されるブックイベントに出展いたします。
ブックカフェで、手にとって読むことができますので、ぜひ、遊びにいらしてください。
また、2020年5月6日に開催される文芸イベント「文学フリマ東京」に出店いたします。私のブースにて、販売予定です。