劇団亜劇第六回公演「落花する青」を観て、逐一変わっていく舞台の空気感と高まる社会の違和感を感情あふれる演技で表現されて面白かった!
2019年11月28日から12月8日まで公演している劇団亜劇の舞台「落花する青」を観てきました。
本作と同時上演される「リリーは死なない」のシナリオのお手伝いをさせていただいた作品でした。
物語を知っていたとはいえ、舞台で演じられる役者のパワーに圧倒され、感情が高まって目頭が熱くなる場面もありました。
正直、存じ上げない役者の方々ばかりでしたが、それぞれが地に足をついた登場人物を演じられ、すぐに舞台の世界観に引き込まれて、最後まで楽しむことができました。
あらすじ
ある女子高生が自殺をし、それは受験勉強の疲れが理由だとされていた。
しかし、それは表向きな発表で、その女子生徒は男性教師に恋をし、またクラスメイトにいじめられていた。
彼女が死んでしまったことをきっかけに、クラスメイトや教師、親、マスコミが、見えない力・権力に踊らされている社会を知る。
自殺した生徒のクラスメイトが、その違和感を打破しようと、自分の正義を貫いていく姿を描く。
見えない力場で、どう人は生きるのかを問うメッセージ
「落花する青」には、様々な問題が集約されていました。
学校内で起こるいじめやそれを見過ごせない正義。
取り戻せない生命を簡単にやり過ごそうとする教師陣の思惑。
個人の力ではどうにもできない社会の権力の中で、どう生きるのか、それに違和感を覚えても何もできないという絶望感。
これらは単なる物語の要素ではなく、今今、自分たちが置かれている状況を再確認させられる内容でもあると感じました。
舞台上で進んでいくお話は、決して明るく楽しいものではないかもしれません。
しかし、目の前の小さな舞台で繰り広げられる大きな社会問題について考えさせられる面白い作品です。
感情あふれる役者のパワーある演技
劇団亜劇の演出の特徴でもある役者の感情あふれる演技のパワーに引き込まれます。
たぶん、演技とは役者本人とは関係なく、シナリオに書かれた登場人物を演じるものなのだと思います。
でも、どこかそれが嘘っぽくもあり、浮いた登場人物に見えることもありました。
しかし、「落花する青」では、それぞれの登場人物が舞台上で地に足をつき、一人一人の存在感に圧倒されました。
どのシーンでも、登場人物が主人公のように見え、役者が登場人物を生きているようにされえ見えました。
おそらく、役を演じるというよりは、役者本人の感情が役と一体化して見える表現が、現実感を感じさせるのだと思いました。
嘘を演じているけれど、本当の感情があふれているんだと感じられました。
いじめをしていた女子生徒が、自ら心を開いて、本音で語るシーンには心を打たれました。
まとめ:逐一変わっていく舞台の空気感と高まる社会の違和感が面白い!
生徒、教師、大人社会という切り口で進む物語は、実際にここを生きてきた私たちの「生きる」を問う舞台だと思いました。
舞台を観て感じられる空気感と、自分の中にある感じたことのある空気感が、心の中でモヤモヤとさせます。
それは、物語の中にある違和感へと形を変え、物語の結末へ集約されていきます。
多くは語らない形で締めくくられます。
それが、「落花する青」が発するメッセージだと受け取れました。
面白い舞台でした。
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