舞台シナリオのブレスト・アイデア・相談を受け、作者の考えを引き出すことに気をつけ、学びと創作の刺激も得た!
舞台演出もする知り合いのクリエイターから、新作舞台のシナリオ相談を受けていました。
以前にもシナリオを読んでフィードバックすることは、やらせてもらっていました。
しかし、今回の新作は難産らしく、なかなか書き進められないと、相談を受けました。
相談といっても、一緒にブレストしたり、アイデアや展開について話しながら作者の考えを引き出していくのがメイン。
シナリオを書いていけるよう、メンタルサポートも含めてオンライン通話で、一緒に作業する時間を過ごしました。
オンライン通話を日毎しながら、自分以外の作家の作品作りを通して、気づいたことや学んだことがありました。
今回、孤独を抱えるクリエーターあるあるを交えながら、ご紹介します。
感情を揺さぶる劇団「亜劇」
「亜種」である「演劇」を作り出す劇団「亜劇」演出家の石田徹弥氏(@tessan27)の作品に関わらせていただきました。
劇団亜劇の作品の見どころは、役者さん本人の感情が真に演技と混じり合い、人間味溢れるところです。
また、石田氏の掲げるテーマも重く絡みあって、しかし、見ているお客さん自身に考えさせるメッセージ性の高い舞台作りが特徴です。
▲過去の公演【惨憺姫】告知映像
今回、お手伝いさせていただく作品は、2019年11月27日から始まる「リリーは死なない」「落花する青」2作同時公演のシナリオです。
リリーは死なない
事故で鉄パイプが心臓を貫いた女子高生、リリー。 その日からゾンビとして生きることとなるのだが、リリーの日々は特に変わらない。 教団が運営する学園、教祖を称える教師、洗脳された生徒、狂った家族。 それはリリーにとって、いたって普通の生活。 しかしある時、リリーはクラスメイトに強い食欲を覚えてしまい……
落花する青
教師に恋した女子高生は自ら死を選んだ。
だが、彼女の死の理由はもみ消される。
― 権力によって。
それを知った友人、紅峰蘭子と蒼樹鈴羽は決意した。
「法が裁かないなら、私達が裁いてやる」
作品の魅力を引き出すことに徹する!
アイデアから飛躍させる
相談を持ちかけられた当初、「リリーは死なない」のプロットがない状態でした。
「落花する青」の構想は進んでいたようで、それほど悩んではおらず、「リリーは死なない」のシナリオ作りを重点に協力していきました。
最初の時点で、フライヤーにある通り、鉄パイプの刺さった女子高生が、ゾンビとしてどう生きていくか、というコアな部分のアイデアしかありませんでした。
確固たる結末もなく、どんなテーマか、何を伝えたいのか、根本的なところを質問したりして、話を膨らませていきました。
ポツポツと出てきたアイデアから結末を描いてみたり、途中でどんなことが起きるのか、物語の展開を考えていきました。
最初のアイデアは、原石!
これを否定しまうと元も子もないので、とても大事に扱います。
「リリーは死なない」では、主人公のリリーがゾンビであること自体がメッセージ性になっています。
いわゆるゾンビものとは、また違った意味を、作品を通して強く訴えるところにアイデアが注がれています。
劇団亜劇による演出と演技で、お客さんの心を強く揺るがすものになると思っています。
作者から引き出す
出てきたアイデアから、それをどう使い、どう生かしていくのか。
また、キャラはそこで何を思い、次に何をするのか。
など、質問をして、作者の考えを引き出します。
相手が悩んで答えなかったりすると、感じたままを私が意見したりもします。
でも、それは押し付けではなく、そこからヒントとなるものが見つかれることがあるからです。
以前は、私が出したアイデアを使って欲しいと思っていたりしました。押し付けることはしませんが、採用してくれれば嬉しいと言うのが本音です。
でも、作家が、そこからさらに面白いアイデアを思いついてくれれば、それでいいのです。
受けた印象を具体的に伝える
部分部分で展開が固まり出したり、キャラクターの動きが分かり始めたら、その印象を伝えています。
形になったシナリオを読んだ場合では、物語の動きやキャラクターの浮き沈み、場面の盛り上がりなどを含めてフィードバックします。
フィードバックする際に、注意したいのは、単純に「面白い」か「つまらない」かを判断しないことです。
「面白い」「つまらない」は、誰でも簡単に言うことができます。しかし、同じ作り手として、その程度しか答えられないのは、その作り手の資質や指針が問われます。
それに、正直、作っている最中の作り手は、ナーバスです。まだ形になっていないものに対して、言葉を選びます。具体的に読み取れた印象を伝えます。
- キャラの動きや物語の展開、メッセージ性が出ているか
- 部分部分で表現している意図は何か
- それらが、しっかり作品のテーマと合っているか
- 作家が目指しているイメージから、ずれていないか
- 面白いシーンやセリフ、描写が、どう面白かったか伝える
初期段階からシナリオ制作に携わっているため、目指す方向性がわかっているので、的外れな意見を言わないようにしています。
好みで判断しないことです。ただ、面白いところは、面白いと伝えます。
たとえ、私の好きなジャンルでなくても、シナリオ制作の視点からしっかり答えるようにしています。
やはり、しっかり伝えたいと思っていることは、受けた印象です。
このシーンは緊張した雰囲気が伝わってきたとか、各キャラの尖り具合や特性、シナリオ全体の波を述べます。疑問に思った点も聞きます。
なぜ、そうしているかと言うと、自分が書いた・作ったモノは、自分で客観的に判断するのが難しいからです。それが、どう相手に伝わるのか、わからないので、受けた印象を具体的に伝えます。
これは、物語を書いている私自身が知りたいことでもあるので、読んで感じた印象を答えています。
そうすることで作り手は、そこを手掛かりにキャラクターやシーンの足りないものを補ったり、変更しないところを見分ける判断材料になるからです。
メンタルサポートと作業監視(サボれない環境作り)
書けない理由は、自分の気持ち
相談のない時でも予定が合えば、オンライン通話をしながら個々の作業を進めていました。
執筆の進み具合を聞いたり、体の調子や生活の話をしたり、他愛もない話で盛りがったりもします。
その中で、書けない理由について深く話すことがあります。
舞台シナリオをはじめ、小説にしろ、ブログにしろ、書けない時があります。書けないと言っても、突き詰めると理由は単純だったりもします。
初めから完璧なものを書こうとしているのです。
自分で目指すべき天井を作ってしまっているのです。高く目標を持つこと自体は、良いです。でも、そこに届かないものは、ダメだと決めつけてしまうと、動けなくなります。
どこまでいっても完璧には辿り着けないこともどこかわかっていて、しかも、それを1回で作ろうとしてしまっているのです。
また、物語におけるキャラクター作りやドラマツルギー、エンターテイメントを意識するあまり、こうではなくてはいけないと言う固定概念がまた、新しい物を作る際に邪魔をして、書くと言う行為を億劫にさせてもいます。
単にキャラクターの落とし込みが不十分で、パーツが揃えば、動き出すこともあります。そんなところも見えなくなってしまうこともあります。
しかし、面白いものは何か、それが周囲に目に見えて溢れて意識してしまう昨今、それが身にしみてわかっているからこそ、作ることに怯えてしまうことがあります。
固定概念を意識するあまり、完璧な納得をしなければ、書き出せなくなります。
今回、石田氏が、特にその気持ちになっていたように感じられました。
とにかく書けと、正論を言うのは簡単です。そう言っては、自分の身に沁みる一言でもあります。
とにかく話を聞き、とにかく励ます!
シナリオが書けないと、書けない理由をよく言われることがあります。
無下にすることなく、聞きます。(ひどい愚痴ばかり聞かされたら、私は嫌なので、聞かなくなります)
ここでも、正論を言っても堂々巡りしてしまうので、聞きます。相手も話すことで、自分の言ったことから自分自身に気づくことがあります。
多くは、書かない理由について、本心では知っています。
なかなか自分と向き合うことは難しいのですが、素敵な場面に出会えることもしばしばありました。
あとは、応援します。作品自体は、面白いので、出来上がるシナリオが読みたいことを伝えたり、途中までの展開の後の展望を質問して聞いてみたりします。
作業監視と集中力を誘う環境づくり
音声だけオンラインで繋いでるとはいえ、相手が作業しているかどうか、なんとなく分かります。
シナリオを進めているのであれば、キーボードを打つ音が聞こえてきます。もちろん調べごとで、ネットを見ていることもあるでしょう。
しかし、あまりにも無音の状態やクスクスと笑い声があったら、サボっている可能性を疑います。
「Twitter見てる?」とか聞きます。
仮に相手がTwitterを見ていても、その姿は見えないのでなんとでも言えるはずです。そこは、自分次第なところです。
一緒に自分の作業をすることは、逆もしかりで、監視される対象になります。
私もTwitter見たり、脱線することもありますが、監視されている意識があるので、わりと真面目に取り組みます。
時々、雑談したりする時間もとりつつ、メリハリのある作業時間を一緒に過ごすことは、お互いに良かったと言えます。
作業自体は、個人作業ですが、共に集中した時間を過ごすことができます。
シナリオ相談を受けて、創作思考を学び、刺激をもらう!
ブレストしたり、アイデアを考えたりと、提供するだけでなく、自分にはない創作方法を知る機会でもありました。
石田氏との場合では、キャラクター作りにおいてストイックなまでに考え込んでいるところは、自分にはなかった部分でした。
そのキャラへのアプローチも全く自分とは違い、視点や角度も作家性があって、話を聞いていて勉強になりました。
何より、作品を作る刺激をたくさんもらいました。
決して、同じものは書けませんが、自分も負けないような作品が作りたいというエネルギーをもらいました。
まとめ:シナリオ相談を受けて、互いの作品を磨き上げる場になる!
作品をより良いものに仕上げたい気持ちは一緒です。
できる限り、アイデアは出し、相手の持っている光をより強く引き出せるようにしてきました。
やりとりを通して、私自身もアイデアの発想や作品に想いを落とし込む方法を学んだりもして、充実した時間を過ごすことができていました。
根気のいる過程ではありますが、良いものができ上がると信じています。
劇団亜劇 2作同時第六回公演 情報
公演期間:11月27日〜12月8日
場所:中野スタジオあくとれ
作品詳細・公演時間・チケット情報は、公式サイトへ↓
劇団亜劇Webサイト