今まで読んだこのない書き視点で戸惑った。世界観に入りこむのに時間もかかった。
作家視点で描かれているのか?
途中まで誰の視点なのかわからず読み進めていた。
でも、事件がはじまって、「金田一耕助」が登場してくるあたりでやっと内容に集中できるようになった。
最後まで読み終えて、まさに推理小説、ミステリー小説でおもしろい小説だった。
文章ひとつひとつに仕掛け、読者との駆け引きがしっかり設定されている。
金田一耕助の謎解きも新鮮だった「金田一耕助ファイル2 本陣殺人事件」の感想。
目次
本陣殺人事件
この「本陣殺人事件」が、金田一耕助が本作に初登場する事件。つまり金田一耕助シリーズの最初の話だ。
金田一シリーズといえば、「八つ墓村」「犬神家の一族」「獄門島」あたりは有名だ。ドラマを見ていたりする。
だから、金田一耕助のイメージは完全に古谷一行さんだ。そのイメージがありつつ、最初の事件である「本陣殺人事件」を読むのは新鮮だった。
なにせ、金田一耕助は25歳前後の若さなのだ。
ドラマだともう少し大人な印象を受ける。
よく走っているイメージも多いのだが、私だけか? 小説だとそんな活発な印象はない。
むしろ、病弱とまでは言わないものの、少し頼りなく弱々しさすら感じられる。
でも、謎を考える姿や謎解きをしているイキイキさは、とても生命力を感じられた。
この「本陣殺人事件」は中編くらいのボリューム。それでもかなりもりもりの情報量で展開も多い。
しっかりと作り込まれていた推理小説で、最後はいっきにおもしろさに飲みこまれた。
車井戸はなぜ軋る
金田一耕助がほとんど登場しない話だった。もちろん事件は語られる。しかし、金田一は事件を解くわけでもない。
この話の大半は手紙で語られている。真相も手紙の中で明らかにされている。
あまり見ない表現。手紙だからといって、うわべだけの話で終わってはいない。
文面からもミステリー小説として読者がアレコレ推理できるように、物事がうまく提示される文章で構成されている。
さらに手紙として形も整っているのである。
舞台は戦時中の片田舎。疎開先のような場所でもあった。
大人の男性が戦地へ行き、帰ってくる下りがある。今では考えられない緊張感や家族の気持ちが読み取れる。
本作の見所、キーポイントも戦争へ行く自分にあったりして、その時代の世相を上手く使った物語になっていた。
また、作中に「獄門島」という単語が出てくる。金田一シリーズにある作品でもあり、時系列の一端に触れる瞬間でもあった。
最後に。手紙を使った構成にドキドキハラハラさせられたエピソードで、おもしろい話だった。
黒猫亭事件
掘り起こされた遺体。それは顔の判別がもうつかない状態であった。
この首なし事件を金田一耕助は、作者に宛てて手紙を送る。まるで「金田一耕助」が実在しているのかのようである。
そして、作者がその手紙をもとに小説に書き起こしている構成。とても面白い作りになっている。
それでいて、読者を意識したミステリー小説に仕立ててもいる。
まとめ
初めて「金田一耕助」シリーズの1巻を読んで、1周回ってミステリー小説の新鮮さを味わえた。
主人公「金田一耕助」が若いというのもある。もっと落ち着いて寡黙な印象を抱いていた(ドラマの影響)。小説では、興味あることには好奇心旺盛で、よくしゃべる。
今まで思っていた「金田一耕助」のイメージが上書きされて、とても良い機会となった。
また、作品のつくり、「金田一耕助」から情報を得て小説を書く体裁も新鮮だった。
他の有名作品「獄門島」「八つ墓村」などの原作小説も読んでみたくなった。
著:横溝 正史
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