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2019年5月6日に開催された文学フリマ東京。
そこで入手したアイテムをご紹介。
漫画原作やアートブック、実験小説など幅広く活動されている河村塔王さんの新作小説3冊です。
どれも短めのお話でしたが、それぞれの世界観を充分に堪能できる作品でした。
本作は、作家カール・フリードリヒ・ヒエロニュムスの作風と生涯をおったルポタージュ風小説。
最初は、実在している作家なのかと思って、読んでいたのですが、少しして架空の人物とわかりました。
彼が作家としてデビューしたのが、2720年のことだったからです。
彼の人柄や作品の作風について書かれている本書ですが、未来のことだけあって、SF風に文学を読んでいるようにも感じられました。
また、ヒエロニュムスの作風がまた奇抜でした。
彼の作品は、なぜか、タイトルのみしか存在していないのです。彼のインタビューや文献を紹介しながら、その理由が語られていきます。
その見解もまた面白く、彼ヒエロニュムスの性格すらも想像させ、最後まで退屈することなく読み楽しめました。
今、この瞬間においている「日常」の出来事を書き尽くそうとする試みで書かれた一文物語。
10ページの本文には、当然ながら、「。」は最後に一つしかありません。
その瞬間を切り取っているため、多くの登場人物が何かをしている表現が、最後まで続きます。
ロジャーが学校の送迎バスを待っている頃、
から始まり、
メアリは隣で眠るチェーザレの財布から現金を抜き取り、
と、世界に生きる人々の名前が次々と上がって、その人たちがその瞬間に何をしていたかが表現されていました。
中には、
ユタカは盗んだバイクで疾走、
と、元ネタがありそうな人物の行動がいくつもあり、実は全部にネタがあるのではないかと思ってしまうほどでした。
10人、20人読んでいくだけでも、世の広さが自ずと想像されていきます。
おおよそ135人ほどの人物の行動が、文字で書かれているだけなのに、世界のどこかが人々が同時に生きているのだという体感すら覚えました。
たった一文ではあるのですが、そこに人類のとてつもない生命力を感じました。
「ヴァン・ダインの二十則」に支配されたお話の物語。
「ヴァン・ダインの二十則」は、推理作家S・S・ヴァン・ダインが示した推理小説を執筆するための基本指針。
3 不必要なラブロマンスを付け加えて知的な物語の展開を混乱させてはいけない。
など、20に及ぶ規則のもと書かれた物語を、二十則に則しながら物語の解説をしていく。
そこから物語の真実が見えてくるミステリー風のお話でした。
その物語と二十則が入れ子のように表現されていて、面白い世界観を味わうことができました。
3作品は、どれも面白い切り口で作られていて、かつしっかりまとめられていて最後まで楽しめました。
新作のたびに、奇抜な試みで作品を作られていくので、次の作品も楽しみです。
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