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小説「舞姫」を読みました。
筑摩書房から発売されていた本で、現代語訳と原文、解説が一つになった文庫版で読みました。
今になって読んだきっかけは、友人との課題読書企画。
いつか読むだろうけど、結局、読まずにいた本を読もうというものでした。
学生時代、授業で触れた記憶がかすかにあったものの、内容は全く覚えておりませんでした。
しかし、明治時代に書かれたものとはいえ、時代背景や身分などを考えながら読むと、とても面白く、興味深い作品でした。
国の役所の命を受けた青年主人公・太田豊太郎が、ドイツ留学へ。
その町で、エリスという女性と出会い、仕事と彼女との間で、豊太郎の揺れる。
時代は、明治。外国へ行ける者は、まさに選ばし者。
これからより発展していく日本を支える一人として外国文化を学ぶ先で、女性と関係を持ったことで、豊太郎とエリスの人生が動いていく経過を描く。
明治時代、明治23年発表された作品。
作中には、「明治21年の冬」とだけ、時間設定が1カ所だけある。
恐らく山県有朋に随行する賀古鶴所の欧州視察に軸を合わせたのであろう。
112ページ
明治時代は西洋文化が入ってくる時代。海外に渡って、西洋を学ぶ時でもある。
作者の森鴎外は、軍医でドイツに留学している。明治21年の9月に帰国。
その外国に行った経験が作中に落とし込まれていると思える。
主人公は日本人の青年官僚で、ドイツ・ベルリンに行き、そこでのできごとが「舞姫」として書かれている。
ドイツでの立身出世の葛藤を描きつつ、ドイツの光と闇に翻弄される。
ほとんど日本のことは描かれていないが、日本でも同じ環境があったのではないかと思えた。
物語は、外国に行った主人公が、日本とは違う文化に触れて、異国の価値観に視界が開けていく。
そんな中、16・17歳と思われる女性エリスと出会い、生活していくことになる。
そこから豊太郎とエリスの人生が変わっていくところが面白かった。
時代背景を考えると、そうそうあり得ることではないんだろうなと思いながら読んでいました。
豊太郎は、国を背負ってきてもいて、当時の小説として作者の視点の高さも伺えました。
時代背景を考えながら、読み進められた「舞姫」は、物語やその時代を想像しながら読める面白い作品でした。
最初に現代語訳を読んで、解説を読み、原文を読んだ。口語と違って、言いたいことのブレがないように感じられました。
原文が、何様にも捉えることのできる口語ではなく、はっきりと意味が伝わってくる文語であることのストレートさが際立つ作品でした。
西洋の風景や役所の仕事が描かれる中、それを端的に表現する意味でも、文語体の味わいがありました。
「舞姫」は、短編小説でとても短い作品です。
しかし、何人もの人たちが、様々な視点で、考察を行っています。
それは、内容がわかりにくいからではないように感じました。
豊太郎の身分に始まり、時代背景やドイツ・ベルリンの建物や地区による光と闇、豊太郎の心情変化、エリスの存在、森鴎外の経験値。
短い作品とはいえ、いろんな角度で切り取りたくなるのは、読んでいて感じました。
小説の中での説明が足りないというよりは、文語体の表現が物事をはっきりと描き、そこからその背景を読み取れるようにしているからではないかと思いました。
明治時代に書かれたとはいえ、内容に古さはなく、人の心情が揺れ動くのは、いつの時代も変わらないのだと、改めて感じました。
現代では、古典になりつつある「舞姫」。
その内容は、現代と変わりなく、揺れ動く人の心を描いた物語でした。
日本の時代背景や、ドイツの舞台背景を読み取りながら、読む「舞姫」は、とても面白い作品でした。
解説や資料も付け加えられている本書を通して、より「舞姫」の面白さを深くしてくれました。
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