文章術の本とは少し変わった文章のための本です。
文章術といえば、ターゲットを決め、何をどう書くかを突き詰めていくものが多いです。
しかし、この本は、すべて逆を行く内容が書かれています。
だからと言って納得がいかないのか。読み始めたら、最後まで読んでしまう魅力ある文章がつまった本でもありました。
一般的な文章術の逆のことが、読みたい自分、読ませたい自分、書いたことが伝わるのか不安でいる自分という書き手へ勇気を与えてくれている、と感じました。
自分の書きたいこと、それは自分が読みたいことだった。
目次
目次・構成
- 序章 なんのために書いたか
- 第1章 なにを書くのかブログやSNSで書いているあなたへ
- 第2章 誰に書くのか「読者を想定」しているあなたへ
- 第3章 どう書くのか「つまらない人間」のあなたへ
- 第4章 なぜ書くのか生き方を変えたいあなたへ
本書は、最初から最後まで文章術の本ではないと一貫して書かれています。
とはいえ、それでは本としての価値がどうのこうのと、合間合間で、文章術コラムが挟まれています。
そのコラムだけで、読む価値があるとか書かれています。
しかし、本文を読んでも、コラムを読んでも、どっちも学びを与えてくれます。
ターゲットを作らない。自分が読むためだから。
一般的に、文章や作品を作る時は、ターゲットを決めて、そこに向かって作った方が伝わりやすいと言われます。
しかし、
「たった一人の誰かに手紙を書くように書きなさい」というものもある。かなりもっともらしいが、それはLINEしてください。
本書では、特定の誰かに言いたいことが「届く」ということがあるのか、疑問視しています。
そう、長く広告業界で、コピーライトを作ってきた著者が言っています。
莫大な宣伝費を使う場合、不特定多数の場所に「置かれる」のであり、「届けられる」のではない、と。
読み手など想定して書かなくていい。 その文章を最初に読むのは、間違いなく自分だ。自分で読んでおもしろくなければ、書くこと自体が無駄になる。
文章を届けようとするのではなく、どこかに置いておくというのはとても腑に落ちました。
そして、文章や作品というものは、作った人の気持ちが反映され、読み手もそれを感じ取ります。
嫌々書いていれば、それも伝わるのだと思います。
感動が中心になければならない。つまらない人間は内面を語る!
これには、ドキッとさせられた言葉でした。
事象とは、つねに人間の外部にあるものであり、心象を語るためには事象の強度が不可欠なのだ。
映画を見たり、おいしものを食べて、の素晴らしさを自分で文章にしたいと思える衝動は良いと言う。
しかし、これは、その事象の強度が伝わらない心象だけを述べたもの、つまり内面を語っただけのものは、つまらないと理解しました。
一時期、そんな風にSNSなどに書いていたことがありました。短い中で、短いまま語ることがありました。
よく考えれば、そんなもの、自分で読んでいても面白いともなんとも思わない。それを他人が読んで、何か思ってくれるのだろうか。
仕事として受けたもの、課題を与えられたり、つまらない映画のことを書くにしても、その事象に対して、「どこかを愛する」作業が必要だと言います。
それを愛した結果、感動したり、心が揺れ動く衝動が自分の中に生まれて、初めて面白くなるのだと感じました。
物書きは「調べる」が9割9部5厘6毛
書くと言う行為に置いて最も重要なのはファクトである。ライターの仕事はまず「調べる」ことから始める。そして調べた9割を棄て、残った1割を書いた中の1割にやっと「筆者はこう思う」と書く。
ライターの考えなど全体の1%以下でよいし、その1%以下のを伝えるために後の99%が要る。
調べたことを並べれば、読むことが主役になれる。
これは、自分の感動を探ることでもあるように感じられた。事象を調べあげ、心象にも気づくことで、書くことができるのではないか。
「調べて」いく中で、感動することが出てくると思います。それを中心に添えなければ、文章も書き手もつならないモノになるのだと言われているように感じられました。
感動が中心にあるのか、「調べる」ことも書き手の役目だと思います。
まとめ
- ターゲットを作らない
- 感動が中心になければならない
- 物書きは「調べる」
- 自分が読みたいことを書く
一般的な文章術とは真逆をいった本書。しかし、その本質は、書くことに必要なことばかりでした。
何より、この本が、著者の随筆を読むようで、面白く文章を読みながら文章のことについて知ることができる本でもありました。
そして、こんな形で文章を書いてもいいのだと、どこか自分で制限していたリミッターを外されもしました。
色々な文章の型を読んでも、決して悪いことではないと思えました。
著:田中 泰延
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