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長野まゆみさんの中編小説「新学期」を読みました。
作者・長野まゆみさんのお名前は知っていましたが、まだ作品を読んだことがありませんでした。
中学生の日常が描かれ、大きな波がある出来事はほとんどありません。
しかし、たんたんと進む物語の中に、きらめく登場人物の心情や風景、それを表す言葉や文章がとても美しく、余韻に浸れる作品でした。
両親がおらず、年のなはれた兄と二人で暮らすことになった主人公。
それを機に転校することになって、新しい学校に行くところから物語は始まる。
それまで、関わりが少なかった兄との関係性が描かれていく。
また、主人公は、変わったクラスメイトと仲良くなる。
ただ、登校初日からそのクラスメイトに、翻弄されて遅刻したり、授業をサボることになったりと、小さな波乱がちょいちょい起こる。
授業をサボって寺院や喫茶に入ったり、クラスでは真面目なやつが、タバコを吸っていたりと学生ならぬ光景が描かれる。
それが、煙ったい表現かというとそうではないのが、とても印象的です。
それぞれの心情が憶測もふくめた形で書かれていて、その真意はなくとも登場人物の行動が仔細に描かれています。
ふくみがある分、登場人物がどんなことを考えているのか、引き込まれていきました。
友達や兄との関係性だけでなく、心情や風景を描く文章も美しく、世界観に引き込まれました。
学校をサボったり、興味深い友人との関係性に、自分の学生時代を振り返って、こんな関係性もいいなと思えました。
物語全体として、大きな起伏はありません。
それ以上に、たんたんとした物語を描く言葉や文章がとても楽しめました。
ひとつひとつの言葉や、文章として並べられた場面を軽やかに想像させます。
兄弟や男友だちとの関係性が、美しく感じられました。
最後まで、世界観や長野まゆみさんの文章から視線を離せませんでした。
思春期の少年のごく短い部分を描いた中編小説。
長野まゆみさん、女性が描く少年の心が美しく感じとれました。
たんたんと少年の日常を描く文章のひとつひとつが軽やかさもある中、とても深く読むことができました。
どの場面をとっても、登場人物たちの気持ちをあれこれ想像しながら、最後まで楽しめました。
落ち着いて読めて、余韻にひたれる静かにおもしろい小説でした。
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