手製本・手作業で物を作ることで、どん底の自分を救い上げてくれて、自分が変化することを認めることができた!
手製本に出会ったのは、2015年の秋。
その年の5月、私は精神的にどん底へ落ち、何もすることができなくなりました。
一度決めたこと、言ったことを曲げてはならない、変化してはいけないと思っていました。
2015年の起点の記事にも自分の弱さを書いていますが、当時、自分の弱さがバレないようし、他人の目ばかりを気にしていました。
そのため、本心とは違っていても、自分に嘘をつき続けました。最終的に、お金を得る仕事と本当にやりたいことが、心の中でぶつかり合いました。
結果、嘘に塗り固められた心は、どうにもならず、自分を精神的に追い込み、動けなくなりました。当然、仕事も私の手から離れていきました。
何もしない日々の中、何かをやりたい勇気をもらう
しばらく何もできない日々が続きました。とはいえ、本を読んだりして、恐る恐る自分を見つめ直すことをしていきました。
唯一、続いていたのが、一文物語を毎日一つ作ること。この時は、ただ惰性で作っていた状況です。
そんな中、ネットで知り合った方が音楽同人イベントに初参加すると知り、応援したくなり、そのイベントに私は顔を出しました。
イベントに参加したその人の行動力から、勇気をもらいました。
その方は、音楽を作る。では、自分は、本当にやりたいことは何なのだろうか、と思うようになりました。
でも、答えは自分の中にありました。小説を書くこと。
ずっと心の中にあったけれど、お金を稼ぐ仕事を言い訳に、やってきませんでした。それを誰かに言うことすら恥ずかしいと思っていました。
イベントに参加したその方を見て、自分も動こうと思い、文学系のイベントを探してみました。
そしたら、文学フリマというイベントが見つかりました。
文学フリマで、手製本と運命的な出会い
文学フリマは、プロアマ問わず、出店者が文学と思う物の即売会。
そこには、単なる本だけでなく、豆本やカード、コピー用紙に印刷されただけのものだったりと、今まで触れたことのない本がありました。
自分も出店者としてイベントに参加する前提で参考に、何か自分にあった形の本がないか探しました。
糸1本でかがる手の平サイズの手製本
そこで、手製本と出会いました。既成の本じゃない本の形でした。自分で本が作れることにも、とても驚きました。
その作家さんに、一文物語のことを伝えたら、一文というコンセプトとサイズ的にもちょうどいいのではないか、と言われました。
すぐにその方が開催しているワークショップに参加し、作り方を学びました。
一文物語の最初の作品は、その方にお願いして作ってもらい、ここで初めて自分の物語が本として形になりました。
1ページに一文だけという本が生まれたのです。
形を生み出すことで、それが自分のツールとなり、世界が広がった
何せ、人と話すがそこまで得意ではない私。
本という形ができたことで、それを見せるだけで、話のきっかけにできると気づきました。
自分に一つの武器が持てた感覚です。よく名刺がわりに、と言いますが、まさにそれです。
そして、値段をつければ、買ってくれることも、人生の中で大きな衝撃でした。自分の作品が売れるのです。
自分の分身が生まれたことで、世界がぐっと広がったように思いました。
手製本を自分で作る
ワークショップで習った方法で、自分でも手製本を作っていきました。
デザインをはじめ、材料選び、道具の選定と一つ一つ自分で決めて、工夫をしていく楽しさを知りました。
糸を引く力加減によって、良し悪しが変わり、上手く作るにはどうしたらいいか。
ネットで検索すれば、答えがあると思っていましたが、それとはまた違う感覚です。
これは、自分で作り、試行錯誤してみなければ、わからないことでした。
手を動かし、自分と会話する!
手製本を作っている最中は、ずっと手が動いている状態です。
他に気になることが、ありませんでした。何か別のことが浮かんでも、すぐに消えていきます。
手製本を作っている時、それだけに没頭できていました。
上手く作りたい気持ちが中心にあり、どうやったら上手く作れるのか。今回は、こうしたから、次はこうしてみようとか。
作業中は、様々なことを自分の中で、自分と会話ばかりしています。
でも、それがとても楽しかったのです。ある意味、自分を見つめているような状況です。
そこで、自分のことに気づくのです。
何かを作ることが好きなんだと、改めて強く意識しました。そして、それを誰かに届けて、楽しんでもらいたいと思うようになりました。
手製本と出会っていなければ、自分のことを見つめ直すきっかけは、もっと後になっていたかもしれません。
どん底から救い上げてくれた手製本を手放す
毎日作っていた一文物語を2018年末でやめ、手製本も一文物語の最終巻を作ってやめることにしました。
手製本を作り、形を生む楽しさを学びました。しかし、本来、自分がやりたいことは手製本を作ることではないと思うようになりました。
手製本制作を通して、小説や物語を作りたいのが、根本にあるとわかってきたのです。
一文物語と手製本をやめようと思えたのは、これらが私をどん底から引き上げるためのものだったと思えたのです。
そして、一文物語と手製本はその役目を終えたのだと。
やめることは、とても勇気が必要でした。やめたら、今までやってきたことが無駄になってしまうのでは、自分が自分ではなくなってしまうのでは、と恐怖すら感じていました。
しかし、やめてみて、それは杞憂に終わりました。
無駄にはならず、それは形として残り、経験は自分の中に残ります。
続けてきたことをやめることで、また新しい世界に踏み出せるのです。
続けることは、一歩間違うと、執着や固執することになり、動けなくなることでもあるのです。
役目を終えたものは、手から放すことで、また新しいものが空いた場所に入ってくるとわかりました。
まとめ
私の場合は、手製本と出会い、手製本を作ったことで、自分を見つめ直すきっかけになりました。
上手く本を作りたいと、色々な工夫をする。それは、やり方を変えること。変化なのです。
同じようにやっていては上手くなりません。それは、自分自身にも言えます。
私は、自分が発言することや行動に変化があってはいけないと思っていました。しかし、変化しないことは停滞なのです。
どんどん変わっていくことが、どん底を脱する秘訣なのだと思います。
急には動けないかもしれません。でも、ゆっくりゆっくりでいいのです。私がここにたどり着くのに5年。現在進行です。
時間がかかるかもしれません。どこかで小さな運命的なきっかけに出会えると思います。それは、後からわかることかもしれません。
変化していいんです。ゆっくりと進みましょう。
まだ私も変化の途中ですし、最終形態はありません。ずっと、進んでいる途中なのです。