2019年11月24日に開催された文学フリマ東京。
そこで入手したアイテムをご紹介。
140字ピッタリで、書かれた短いお話が活版印刷されたカードシリーズ。
私は、イベントごとにこの活版カードシリーズを購入しています。
今回は、「象と僕の旅」と題された第十三期のカード。5篇の140字小説セットになっていました。
目次
一四〇字小説活版カード「象と僕の旅」
5篇の140字小説は、1篇1篇別のお話であるにもかかわらず、続きになっているようにも読めました。
象に乗った少年の視線に広がる世界をかまい見ることができます。
旅していくと、自然の中で、少年は様々な疑問を象に伝えます。象は、優しく答えてくれます。
私自身もハッとさせられる象の優しさが伝わってきます。
そして、象との別れもありました。雲をその象と見てしまうところは、少年の幼さを感じつつも、それでも少年は歩いていくことを決めます。
象がいなくなっても、少年の成長する姿が、とても微笑ましかった。
5篇を通して、きっと誰もがどこかで、自ら歩まなければならないことを諭されているように思えた作品でした。
活版印刷独特のインクの乗り方で、文章の印象が変わる
本作には、たくさん「象」という字が使われています。
インクの乗り方や圧の強さによって、一文字一文字、濃さが違っていました。
その濃さによって、文章の印象がなんなとく変わるなと思いました。
濃いインクの「象」がある場合は、強さや印象深くなったり、逆に薄いインクの「象」の文章は、軽やかに優しい、はたまた儚さの印象を得ました。
まばらなインクの乗り方が読みづらいわけではありません。
一般的な印刷のカスレとかというわけでもなく、字ははっきり読めますし、バラ付きが気になることもありません。
その中での、細かい印象の受け方が、本作にあり、活版印刷ならではの偶然が思わせてくれたのだと思います。
なかなか一般的な印刷では、意図的に作り込まなければ表現できない微細な味わいを体験しました。
まとめ
「象と僕の旅」は、1篇1篇別々の物語でしたが、まるでつながったような構成が面白かったです。
活版印刷ならではの、インクの乗り方や圧の印象の違いで、文章を読む味わいも楽しめることができました。
作者のほしおさなえさんは、活版印刷を題材にした小説「活版印刷三日月堂」を書かれています。
活版印刷を通じて人々との心が繋がっていくお話で、一つ一つのエピソードは、毎回、心にグッとくるものがあります。
オススメです!
ほしおさなえさんのTwitter:@hoshio_s