小説「掠奪都市の黄金」by フィリップ・リーヴ を読んで、氷の平原の移動都市で主人公たちの運命を分かつスリリングな愛と冒険の小説!

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小説掠奪都市の黄金の表紙
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長編SF小説「移動都市」の続編「掠奪りゃくだつ都市の黄金」を読みました。

移動都市シリーズは、4部作で、1作目は実写映画化され、壮大なスケールが圧巻の映像で表現されていました。

映画化されるという映像を見て、引き込まれて、原作小説「移動都市」を読んだのがきっかけで、続編にも手を伸ばすことになりました。

続編となる「掠奪都市の黄金」は、「移動都市」完結後から2年後の物語。

舞台は、氷の平原を移動する移動都市。他の移動都市の時代から取り残された不思議な都市で、物語が始まります。

目次

あらすじ

古代兵器の暴走でロンドンが炎上して二年あまり、トムとへスターは飛行船を飛ばしていた。だが、北の表現で移動都市アンカレジに拾われたことから、ふたりの運命は急転する。最終戦争で文明が荒廃した遥かな未来。移動しながら食ったり食われたりを繰り返す都市と、それに反撥する反移動都市同盟が争う奇怪な世界で生きる、トムとへスターの冒険。星雲賞受賞の『移動都市』続編。

恋仲になった主人公のトムとへスターの愛が、極限の寒さに凍りつく出来事があったり、別々に行動する二人が、物語を結びつける流れには、面白さを感じないわけがありません。

移動都市らしい舞台設定

1作目「移動都市」とあったので、移動する都市の中だけが舞台だと思っていました。

しかし、主人公たちは大地に放り出されたり、飛行船で空を飛んで、空の街に行ったりしました。

その点を踏まえると、2作目である「「掠奪都市の黄金」は、氷の平原を移動する都市を中心に物語が進んでいきます。

空のシーンが好きな私からすると、もっと空のシーンが欲しかったのは事実。

それでも、新しい乗り物や反移動都市を掲げる人達のアジトも出てきて、より「移動都市」の世界観が広がりを見せられます。

氷の平原を移動する緊張感

土の上を進む移動都市ではないので、移動にもまた違った技術や装備が必要。

また、道という道があるわけではなく、氷に隠れた穴を避けながら進んだりと、その土地ならではの苦労が感じられます。

当然、常に寒く、吹雪いている状態が続きます。

突然、黒い影を吹雪に映り、吹雪の中から捕食者の移動都市が姿を現れて、追われる場面もあり、緊張感ある物語になっています。

タイトルにある「掠奪」という意味もいろいろ考えられる作りになっているとも思えました。

変化をしていく個性的なキャラクターたち

個性的なキャラクターがたくさん登場します。それも本作の一つの楽しみとも言えます。

中で、序盤からトムとへスターと行動することになった少し年のいった教授がポイント。

この教授を飛行船に乗せたことで、物語が動き出すと言っても過言ではありません。

そして、終始、教授の気持ちの変化があり、物語とリンクしているところが本作のキモのようにも感じられました。

多視点で、全てを描く小説

1作目と同様、主人公だけの視点で描かれるわけではありません。

様々な登場人物の視点から描かれていて、移動都市の世界観を余すことなく届けてくれます。

登場人物の気持ち、内心の声がそれぞれに書かれていることもあり、場面場面でみんなが考えていることがわかります。

それがわかりやすく、どんな思いでこの世界を生きているのかを現しています。

その分、文字量が多く、読み応えありますが、難解な言葉はあまりなく、どんどん読み進めていけます。

旧字の漢字が使われる

タイトルである「掠奪」も旧字体。本来は、「略奪」です。

時々、旧字体の漢字で表されるところが見受けられます。

庖丁ほうちょう抽斗ひきだし」も、調べないと読むことができませんでした。

なぜ、旧字体が使われているのか、原文がそうなのか、確かな理由はわかりません。

本作に限って言えば、氷の平原を走る移動都市の中に、陳列室があります。そこは、過去の遺物が並べられています。

昔のものがあるから、その雰囲気を出すため旧字体の漢字が使われていのかもしれないと思うことはあります。

実際の意図まではわかりませでした。

まとめ

「移動都市」の続編「掠奪都市の黄金」は、前作とは舞台も物語の流れも全く違いますが、スリリングさは依然と感じられました。

やはり、私は教授のキャラクターの変化がとても興味深かったです。むしろ、人の様をよく表しているキャラクターだなと思いました。

壮大な世界観は、健在で、新たな移動都市世界を堪能できること間違いなしの続編です。

著:フィリップ・リーヴ, 翻訳:安野 玲
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