小説「活版印刷三日月堂 空色の冊子」by ほしおさなえ を読んで、弓子が三日月堂にやってくるまでの成長が垣間見れたり、1巻〜4巻の背景が読み取れる番外編!

小説「活版印刷三日月堂」シリーズの5作目。

4作目で完結とされていた本作シリーズに、5作目が登場。

三日月堂シリーズの番外編で、三日月堂店主の弓子が生まれる前から、川越にある三日月堂にやってくるまでが描かれています。

弓子の視点ではなく、弓子や三日月堂を取り巻く周囲の視点で描かれています。

弓子の成長が垣間見れたり、弓子の母や父が登場したり、祖父母が三日月堂で仕事をしていた時代が描かれ、三日月堂の歴史を読み解くことができました。

活版印刷作りがメインではなく、その点もの寂しさもありましたが、三日月堂や弓子の成長を追うことができて良かった本作をご紹介します。

目次

小説「活版印刷三日月堂 空色の冊子」の各編の概要と感想

7つの短編で構成され、弓子の生まれる前から物語は始まります。

1〜4巻に登場した人物の若い頃や、アイテムとして登場したものや、キーワードとして出てきた言葉の真相が描かれていました。

目次・構成
  1. ヒーローたちの記念写真
  2. 星と暗闇
  3. 届かない手紙
  4. ひこうき雲
  5. 最後のカレンダー
  6. 空色の冊子
  7. 引っ越しの日

1.ヒーローたちの記念写真

少しずつ活版印刷が社会から薄れていく頃、三日月堂の先代がまだ健在の時代。

映画評の本を作る話で、出版社内で、その企画が通すことができなかった。

もう誰も読まないとされる映画評を書いてきた作家が、時代の節目に立つ活版印刷の活字を見て、自分の熱い思いを残したい気持ちが芽生え始めた。

熱心にその映画評を読んで、面白がってくれた人が身近にいたことに気づき、その人のために形にしたくなる。

人が、何かに熱を持って動き出す、動いているところを見て、私自信の心も熱くさせられました。

そして、これから本という形にする決意が決まったところで、それぞれの役割を持った人物たちが記念写真を撮るところで終わります。

2.星と暗闇

弓子の父親視点で、妻との出会いや星への興味、実家の活版印刷所への思いが描かれています。

本編では、すでに弓子の両親はなくなっているところから始まっています。

ここでは、弓子へ両親の愛情が注がれるのが見ることができ、その姿が心にしみました。

弓子がまだ幼い時に、母が亡くなり、その夫が妻の死を通して成長することもあって、本編への背景が読み解けた深い話でした。

3.届かない手紙

三日月堂の家で過ごす幼少期の弓子を祖母の目線で語るお話。

幼いながら弓子が、祖父の活版印刷三日月堂を引き継ぐきっかけが読み取れる1編でもありました。

弓子が父親と住むため、横浜へと行ってしまう前日、祖母と弓子が弓子の名前を入れたレターセットを印刷する光景が印象的でした。

弓子という名前の由来、遠くへ思いが届くという意味も語られ、手紙も遠くへ思いを届けるものと諭される。

弓子は、すでになくなった母へも届くかなと聞く。

届かない手紙を書いていい、とやさしく言う祖母のセリフに目頭が熱くなりました。

4.ひこうき雲

弓子の母カナコの同級生の物語。

本編に少し出てきた登場人物で、そのいきさつが濃厚に描かれていました。

夢に生きる学生時代、カナコたちと一緒にバンドを組んで、歌手を夢見ていた。

しかし、両親との考え方の違い、社会人生活を送る中で世間体を意識する自分との葛藤。

そして、お見合いで結婚をし、その夫と自分の中にある恐怖に向き合い、生き方を考えさせられるお話でした。

5.最後のカレンダー

三日月堂に紙を下ろしていた紙屋さんが、年始に向けてカレンダーを作るお話。

三日月堂を閉じることが決まり、最後の印刷となってしまうそのカレンダー。

三日月堂の親父さんを通じて、紙屋の店主が死んだ父のことに思いを馳せる。

三日月堂が閉じられてしまう寂しさと、継ぎたくもなかった父の紙屋を継いだ自分の思いが交錯する。

紙屋さんならではの社会に普及する紙への悩みも描かれる一方で、最後のカレンダーとなってしまう紙選びへのこだわりで、作品世界に一気に引き込まれました。

6.空色の冊子

三日月堂はすでに閉じられ、妻に先立たれた親父さんが一人で暮らしている時、大きな地震が起こった。

すでに使わなくなった活字棚が、倒れて活字がバラバラに落ちてしまった。使わないのだから、そのまま処分してしまうことも考えるも、なぜかそうはしなかった。

そこに、地震の影響で印刷ができなくなった幼稚園の卒園冊子を急遽、手動印刷のできる活版印刷で作ることになる。

大災害に見舞われた年、園長先生の思いが活版で文字が紙に刻まれる場面には、目頭が暑くなった。

また、大人になった弓子が、印刷の手伝いに来て、その成長も見ることできた本作のタイトル編。

7.引っ越しの日

演劇を観にきていた弓子の大学の同級生が、かつて自身も演劇をしていた横浜にふらっと寄る。

そこで、翌日、川越に引っ越す弓子と偶然出会い、弓子の部屋に転がり込む。

以前、弓子に引越しを手伝ってもらったこともあり、弓子の引越し先にある活字にも興味あったことで、翌日の引越しにも付き合うことに。

両親を亡くした弓子の現状と演劇をやめた自身を比較し、ただ生きることの大切さを知る。

そして、偶然にも地元の劇団が演者を募集している情報が入ってくる。

何かに悩みながらも、人との出会いや偶然から希望を抱き、生きていく。

人生観を考えさせられるお話でした。

まとめ

三日月堂店主の弓子の生まれる前から、三日月堂にやってくるまでが描かれ、1巻〜4巻までの背景が読みとることのできた本作。

4巻までの本編に比べると、活版印刷作品は少なく、物足りなさは正直ありました。

でも、三日月堂の動きや弓子がどう成長し、どう三日月堂にやってくるのか、その背景が読めて嬉しく思えた5巻でした。

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