ピノキオといえば、誰でも知っている童話。その原作小説「ピノッキオの冒険」を読みました。
大人が読んでもすごく面白かったです。もちろん文章は、子供向けとして書かれていますので言葉や物語の展開もわかりすかったです。
ですが、私が知っているピノキオとは、印象が全く違いました。絵本やアニメ映画の印象が根付いてしまっているのか、原作も同じようなものだろうと思っていました。
海に出て、飲み込まれるのがクジラではないという話を聞いたことがあるくらいでした。
内容もさることながら、根本から設定も違っていたのです。そんな原作小説「ピノッキオの冒険」をご紹介します。
目次
本の構成
もともと当時の雑誌に連載されていた作品で、各章の冒頭に前書きがあります。
第1章から36章まであり、各章は4ページから6ページ前後です。
今回読んだ本は、光文社古典新訳文庫から出ているもので、大岡玲さん訳。とても読みやかったのと、本の巻末1/4は、原作小説の解説が入っていました。
これがとても興味深い内容なので、一度本編を読んでから解説を読むと、理解が深まります。
また、作者のカルロ・コッローディの年譜とあとがきがあります。
メッセージ性の強い感想を抱いた原作小説
大まかな展開は、絵本やアニメ映画と変わらない印象でした。
とはいえ、根本からキャラクター設定が違っています。絵本やアニメ映画が原作小説の意図を上手く編集していることに気づきます。
一章一章、わかりやすい言葉で淡々と進んでいきますが、その内容は重いのです。
特にピノッキオの性格と物語の展開が合わさることで出る読者へのメッセージ性が身にあまるほど伝わってきます。
ある意味意図的であり、宗教的な印象も抱きました。
物語の解釈
巻末の解説には、物語の解釈が載っています。原作が書かれた時代背景についても説明されているので、小説にどう反映されているのか観察するにはとても興味深いものでした。
また、読んでいるときにも思いましたが、宗教的なところを感じました。
解説によれば、私の抱いた解釈とは、逆の意味で、よく考えられた作品なのだと思いました。
読み終えて、私はこの原作小説が、現代社会をも風刺しているようにも感じとることができました。
終始、ピノッキオのことをあやつり人形と書き続けられています。冒険内容がまるで現代社会を生きる人々のように感じてなりませんでした。
糸のないあやつり人形は自由奔放に生きているのですが、実は操られていて、現代社会を不安に生きているようで、みんな実際には、本当の人になりたいのでは、と思いました。
最後に
ピノキオの原作小説を読み終えて、久しぶりに解釈を楽しめる作品に出会ったと感じました。
もともと持っていたピノキオのイメージがあったせいか、原作小説が逆に新鮮な印象として読むことができました。
違いを楽しみながら読むことができた原作小説。ただ、どちらのピノキオも可愛いことには変わりありません。
カルロ・コッローディ/大岡玲 光文社 2016年11月09日
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