ギヴァー4部作の4作目である「ある子ども」。
書店で、3作目「メッセンジャー」の表紙の緑色を見て、内容を確認せず読みたいと思って、読み始めたシリーズ最終巻。
ついに、シリーズを最後まで読み終えることができました。
4作目は、描写が詳細な分、ページ数も多く、読みごたえのある作品でした。
自分を信じるという、まさに現代に通じる大きなメッセージ性も感じとれました。また人の良い面、悪い面を見させられ、改めて自分を問う作品でした。
目次
あらすじ
少女は14歳で〈イレモノ〉となり,〈産品〉を身ごもった。
やがて生まれた男児には,ある「欠陥」があった――
はたして少女は〈母〉になることができるのか。
前三作の登場人物が一堂に会し,すべての謎が解き明かされ,壮大な物語の環がとじる。
書籍の帯紹介より
舞台は、1作目の町。〈出産母〉に選ばれた少女の視点で、物語は描かれていく。
それはまるで、1作目の物語を別視点でなぞるように見ていくよう。1作目の少年視点とは違って、町の広い世界を垣間見ることができる。
しかし、このコミュニティー独特の狭さは相変わらずで、登場人物もコミュニティーの約束ことに縛られていることが伝わってきます。
〈出産母〉になった主人公は、無事子供を産むが、二人目を産むことなく別の仕事に就くことになった。主人公は、次第に自分の子供がどうなったの知りたくなり、子供を探していくことになる。
1作目の色の仕掛けが、4作目で社会の狭さを際立たせる
1作目「ギヴァー」の感想にも書きましたが、コミュニティーの中で「色」の認識が明示されることはありませんでした。
それが本作ではっきりします。しかし、それが小さなコミュニティーの慣習、約束事になってしまっていたことがわかります。
私は、ここで恐怖を覚えました。
他では当たり前のことが、認識できず、疑いもできない世界の狭さに心を痛めました。
児童文学作家の小説とはいえ、小説を通して、常識を疑え、広い視野を持て、言われていると感じました。
この最終巻は、至るところに作者のメッセージが散りばめられているように感じます。
主人公はことごとく試され、いやそれは自分から進むべき人生を、自ら選ばせています。協力してくれる人もいますが、全ては本人から動いた結果のことでした。
この小説は、ただただそこにいるだけではいけないことを警告しています。
現代に通じるメッセージ性
読み終えて、私はすぐに本作の感想を言葉に落とし込めませんした。
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四作に登場してきた子どもたちは、特別視され、ただそれは、特異な性質において普通から離されているものです。
しかし、彼ら彼女らは、自分を疑わず、周囲に疑問を持って、自分の意思で確かめ行動を起こしています。
そして、ずっとその場にいることはなく、移動していることも彼らに共通することでした。
自ら、自分の人生を選んでいるのだと、強く感じました。
では、自分はどうするのか。
そう問いをぶつけられてました。
まとめ
小説とは、ある種、違った世界や魅力的な登場人物の物語を、読んで楽しむものという見方がありました。
しかし、本作はそれらとは違い、読む人に問いを投げかける作品でありました。
こんな作品に出会ったの初めてで、書店で3作目「メッセンジャー」を見かけることがなければ、こんな読書体験はできなかったでしょう。
ロイス・ローリー/島津やよい 新評論 2018年04月20日
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