小説「ギャザリング・ブルー 青を蒐める者」by ロイス・ローリー を読んで、見えない恐怖に包まれながらも、少女が自分の力と死んだ母親からの言葉を信じて、懸命に生きる物語だった!

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ギャザリング・ブルー 青を蒐める者 by ルイス・ローリー の表紙
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ギヴァー4部作の2作目「ギャザリング・ブルー」。

本屋さんで、3作目「メッセンジャー」の表紙の緑色を見ただけで、内容を確認せず読みたいと思って、読み始めたシリーズです。

2作目も舞台は、近未来。1作目同様、科学が廃れて小さなコミュニティーで淡々と1日を生きる人々の物語。

場所や主人公が1作目とは変わっていて、足は不自由だが、裁縫の才能を持った少女が主人公。

来たる〈集会〉で歌手が着るためのガウンを修復する中で、少女の成長や家族、また村や世界がどんな歴史をたどってきたのかを想像させる小説でした。

目次

天涯孤独となった少女の運命

脚の不自由な少女キラは、母を亡くし、天涯孤独の身となったしまった。

「欠陥のある者」に非寛容な村のおきてにしたがい、〈守護者評議会〉の評定をうけることになったキラ。

しかし、召喚された彼女を待っていたのは、思いもよらない運命だった…

「青という色」をめぐるスリリングな展開のなかに、前作『ギヴァー』、思索と議論を呼びさます巧妙なしかけをちりばめた“フィクションの達人”ローリーの面目躍如たる傑作!

書籍帯の紹介より

スリリングな展開はあれど、決して派手なアクションはなく、淡々と少女の静かな葛藤が続く作品。

主人公を取り巻くキャラクターもユニークで憎めないが、心のどこかに冷たさを感じるのも意味深い。

それが背景である世界の歴史を無言で表現しているようにもとれます。

何かを知る者と何も知らない者たちの世界を見て、少し怖い未来を見ているようにも感じられました。

「青をあつめる者」というサブタイトルが弱い?

読み終えた時、サブタイトルにある「青を蒐める者」の意味が弱いと感じました。

それは、主人公自身がそこまで「青」に強いこだわりが見えなかったのです。

最終的には、「青」が主人公の少女のもとにもたらされるのですが、作品の中で、そこまで強い意味には感じられなかったというのが、正直な感想でした。

色の仕掛け

1作目「ギヴァー」にあった色の仕掛けは、実は本作でも続いているのではないかと、あとあと思うようになりました。

1作目のように、色の仕掛けについては語られていません。

しかし、その設定がもし、本作にも引き継がれているとしたら、最初に読んで想像した世界観は、ガラッと違った見え方になると思えます。

そう考えると「青を蒐める」意味も、鮮明な色となって目の前に現れることになります。

色一つとっても、想像を広げてくれる面白い作品だと、読み終えてから、じわじわ感じられるようになりました。

知るものと知らない者の世界

1作目同様、小さな村、コミュニティーを舞台にしていて、決して広い舞台設定ではありません。

しかし、小さな世界で、必ず外を知るものに支配されているように感じられる物語。

狭い世界を描くことで、外の世界がどんなものなのかを想像させてくれます。それは、好奇心を呼びますが、不安と恐怖に包まれているものとも言えます。

近未来感を感じられるのに、どこか昔の世界のようにも感じられる不思議な世界。

それは、作者からのメッセージで、現代における忠告のように感じられました。

知らないうちに、何かを知るものによって、囲い込まれているということを伝えているのではないかとも思えました。

まとめ

見えない恐怖に包まれながらも、少女が自分の力と死んだ母親からの言葉を信じて、懸命に生きる物語でした。

激しいアクション、大冒険がある作品ではありませんが、少女がただただひたむきに、強く生きる気持ちが周囲の人々を動かし、感動させてくれました。

SFとは違った近未来を想像し、また考えさせてもくれる小説でした。

著:ロイス・ローリー, 翻訳:島津やよい
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