本作の1巻との出会いは、友人に勧められ、しかも友人が本屋さんで買って、その場で私に手渡してくれました。
以来、作品の面白さにはまって、読み続けているシリーズ作の第4巻。
大学生の女の子2人が、ここではない怪奇にあふれた謎の裏世界を探検するSF小説。
作品のモチーフは、ネットロアと呼ばれる実話怪談。現実や裏世界を行き来したり、現実にも怪奇現象が現れるお話になっています。
本巻で、主人公・空魚とその相方・鳥子の距離感がより近く展開でした。
帯にも二人の関係性を匂わせるセリフがありました。しかし、表紙からうかがえるほど、和やかな展開ばかりでもなかった4巻。
1巻以来、久しぶりに怖さを感じられる面白い4つの物語でした。
目次
小説「裏世界ピクニック4 裏世界夜行」各編の概要と感想
目次・構成
- ファイル12 あの牧場の件
- ファイル13 隣の部屋のパンドラ
- ファイル14 招きの湯
- ファイル15 裏世界夜行
ファイル12 あの牧場の件
ファイル12は、前巻の終わりからの続きにあたるお話でした。
前巻で、空魚と小桜がとらわれていた場所をDS研とともに掃除しに行く。
空魚は、不思議な目を宿して裏世界へのゲートが見える。不要なゲートを鳥子は、不思議な手でゲートを操作し、閉じていく。
いつになく二人の距離が近くなったり、突然の怪奇出現で、久々に怖さも感じられた裏世界ピクニックらしい話だった。
ファイル13 隣の部屋のパンドラ
空魚の隣の部屋で異変を感じる。
部屋にいづらくなった空魚は、後輩や小桜の家に泊まらせてもらう。
相談されなかった鳥子は、焼きもちをやいてしまう。空魚と鳥子の距離感の関係性が変化していって読んでいて面白い。
そんな鳥子と一緒に空魚の隣の部屋を確認するも、部屋にあったのは、髪の毛と鏡台だけ。
「禁后」という字が出てきて読めなかったので、ネットで調べてみると、元ネタが出てきてしまい、ついそっちも読んでしまった。
それも怖かった。字そのものは読めず、憶測はいろいろあるらしかったが、嘘でも実話でも怖い。
元ネタと本編、ともに怖さを感じられた話でした。
ファイル14 招きの湯
空魚、鳥子、小桜の三人で温泉に行くリラックス回と思えた話。
とはいえ、それぞれプライベートで深入りされたくない部分があり、温泉に入ることを渋る。
それでも、三人は、思い切って温泉を楽しんで心も次第に打ちとけていく。
そして、夜中、寝汗を流しに行く空魚と鳥子。
やはり怪奇現象に出会ってしまう。裏世界ではなく現実で迫る。
今回は、小桜含め、裸の付き合いで、深い心の探り合いも楽しめる回でした。
ファイル15 裏世界夜行
本作のサブタイトルにもなっているファイル15。
キャンプ用品を揃え、改造した農業機械で裏世界の未開拓地を進む。まだ、裏世界で夜を越したことはないため、初の挑戦となる。
昼間の行動は慣れたものの、暗くなるにつれて怪奇なモノたちも現れてくる。そして、夜とともに雪が降る幻想的な世界にもなる。
空魚の過去や鳥子の愛が見れ、四巻目にして、作者のやりたい意図がようやくわかった。
まとめ
一人で行くのは怖いけど、誰かと一緒なら行けてしまう。そんなことが疑似体験できる小説です。
裏世界の新しい入口やルートが開拓され、日常にも裏世界からの影響が出てくる新展開。
一巻以来、久しぶりに怖さのある物語だと感じられました。
また、空魚と鳥子の距離感が一気に縮まって、ほっこりもできた。
ただ、本来の物語の本筋が見えず残念でもある。次回に、本来の目的が進む物語であることを期待したい!
著:宮澤 伊織
¥772 (2024/11/13 05:32時点 | Amazon調べ)
ポチップ
5巻の感想記事
小説「裏世界ピクニック」の感想記事